町内会や自治会というものは、全国各地に存在します。しかしなかには、その存在意義に疑問の声が上がり、町内会をなくした地域もあります。
マンションなどの管理組合がない一戸建てでは、近隣の横のつながりをつくるために町内会があり、引越すと早々のうちに勧誘されることが多いです。賃貸でも町内会に入るべきか悩む人のために、町内会の役割や実情について紹介します。
一戸建てに引越すと、町内会に勧誘される?
町内会は今や、加入会員の高齢化が進んでいます。以前ならイベントなどを多く開催して活気のあった街も、役員や実行委員の高齢化により、規模を縮小するようなところも出てきています。
「なんとか若手の会員に加入してもらいたい」という切実な願いから、賃貸であれ一戸建てに引越すと、町内会の役員や班長が勧誘に来ることが多いです。
ゴミを出せないなら入るしかない
マンションなら敷地内にゴミ置き場があり、24時間いつでもゴミ出しできるところが多いです。住民は清掃の必要がなく、周辺道路や共有部分もすべて管理人が毎日清掃しているため、清潔に保たれています。
しかし、一戸建てでは、それらの一切合切を自分でやらなければなりません。ゴミ置き場の管理は市から任され、町内会ごとに当番制で清掃を行うことが多いでしょう。ネットが破れるなどしたときは、町内会費で修繕したり新品のものに買い換えたりします。
このように、地域内のゴミ置き場は町内会の管理となっているため、非会員にはゴミ出しの権利がないとしているところもあります。非会員のゴミ出しを監視し、ルールを守らない人に対して警告文をポストに投函するなど、ルールが厳しい町内会もみられます。
そうなると、非会員は見張られていない真夜中にゴミ出しをしたり、ほかの地域のゴミ置き場にわざわざ捨てに行ったりすることになってしまいます。皆が寝静まった深夜にゴミを出すと、野良猫やカラスに荒らされることも考えられます。
周辺の道路にゴミが散らばると、その週の清掃当番が片付けなければならず、ますます非会員への風当たりが強くなります。そのため、ゴミ出しのルールが厳格なところでは、さっさと会員になってしまった方が嫌な思いをせずにすむと言えるでしょう。
加入率が多いなら、入る方向で検討
会員世帯数は、会報や年に一度の総会議事録などでわかります。古くからの世帯や新興住宅地などがほどよく混ざり、転入者の加入率も高く、近隣の世帯の多くが入会している地域なら、加入して損になるようなことはないでしょう。
正しく機能していれば、住みやすい街と言える
町おこしなどを積極的に行っているような地域で、古くからの住人と転入してきた新しい住人とがうまく共存している場合は、安心な組織だと言えるでしょう。一部の役員が独善的に支配するような形ではなく、会長や会計監査など主だった役員が老若男女でうまく構成されていると、風通しが良い町内会です。
定期的に会報を発行し、活動報告などをしていることも重要です。このように町内会が正しく機能している地域は、人気のある住みやすい街として評判が高く、防犯面でも安心できそうです。また、地元の寺社や祭りなどの有形無形文化財を守る土地柄だと、町内会費のほかに寄付金や寺社の修繕費などの徴収もあることがあります。
災害時に助け合える
町内会や自治会は、行政から細分化された組織です。そのため、地域の広報物の配布やゴミ置き場の管理、街灯の設置、防犯・安全対策、パトロール活動、高齢者の見守りなど、あらゆる役割を任されています。
災害などいざというときのためには、近所の自治会館や敷地の倉庫に、毛布や食料、消耗品などを備蓄しています。市町村からの補助もありますが、町内会費の一部を様々な備蓄費に充てているところも多いです。もしもの災害時には、会員に無償で配布されます。
一方、非会員には、当然ながら優先的には回してもらえないでしょう。自宅にいられずに最寄りの避難所に移動した際に、会員と非会員の配給品を区別されても、文句は言えません。そんな災害時に、非常持ち出し袋を持って、幼児や高齢者とともに避難するのは困難です。
町内会の横のつながりがあれば、声を掛けてお互いに安否を確認したり、助け合ったりすることができます。家族構成を知っている、日中に高齢者が一人になる時間帯があるなどを理解し合えていると、万が一の際にも心強いものです。
子どもがいるなら、各種イベントに参加させたい
地元の夏祭りなどは、町内会や自治会の主催で行われることが多いです。さらに、子ども会の焼き芋会やもちつき大会、市内の町内会対抗運動会、防災訓練など、小さな会合から大きなイベントまで、会員に向けて回覧板で告知があります。参加のくじ引き券なども、ここについています。
町内会のイベントが盛んなら、入会がおすすめ
非会員だと、イベントがあっても日時などはわかりません。近所でイベントをやっていても、遠目から眺めるだけで、参加できないこともあります。子どもたちやその親がイベントの話をしていても、会話に入っていけないでしょう。
「近所の仲良しの友達が参加しているのに、なぜ自分は参加できないの?」などと、子どもに寂しい思いをさせてしまうことにもなりかねません。町内会が主催するイベントに参加できる年齢の子どもがいれば、入会することをおすすめします。
ママ同士の交流も深まる
初めのうちは、「引越してきたばかりで、まだ町内会に入っていないのだろう」と周りは納得するかもしれません。しかし、いつまで経っても入会せず、子どもをイベントに参加させないと、変わり者という目で見られてしまうこともあります。躊躇しているなら加入してしまった方が、地域へ馴染みやすくなるでしょう。
まだ幼稚園に通っていない乳幼児がいる場合は、公園などで気の合う友達ができることもあります。さらに町内会に入って清掃活動やイベントに参加すると、出会いの場はさらに広がっていくでしょう。
加入はあくまでも任意、居住予定年数にもよる
なかには、理想通りではない閉鎖的な町内会もあります。町内会費がやたら高いのに、たいしたイベントもなく、組織的にもあまり魅力を感じない町内会なら、加入するメリットはないでしょう。
働いていて土日は休めない、イベントに出ることもできなければ、話し合いに参加する時間も取れないと言うなら、無理して入会する必要はありません。特に、転勤族で、また何年後かに引越す場合は、不都合がなければ非会員のままでも良いでしょう。加入は本人の自由であり、誰にも強制はできません。
ゴミ置き場は町内会の管理ではなく、市民の権利として自由に出すことができるとしている場合もあります。
住みやすい街には、家族世帯が自然と多く集まります。そのような地域は、たいてい町内会の努力による功績が大きいため、安心して加入することをおすすめします。ただし、町内会はその町に住んでいる全員が加入しているものではありません。強制ではなく任意なので、自分の意思で決めれば良いでしょう。